「野中 梓 展」
2023年10月16日(月)〜10月21日(土) Oギャラリーeyes
壁や床、冷蔵庫、テレビ画面(ガラス基板)などの平らなところを対象に、その表面に見える明暗や色味を油絵具で描くことを続けてきた。ある場所の絵を1枚描くと、もう1枚描いてみたいところが増えていく。数年前に夜の廊下の壁を描いた。ひとつの壁が時間帯によって異なる表情を見せ、そのことがとても豊かなものであると思えた。電気をつけてみたり、消してみたり。では昼間はどうだろうか。夕陽が差し込む時に、西向きに小窓があるトイレの扉を開けてみたら?ほかの壁は?…そうして少しずつ派生していき、今に至る。
・階段の壁について
これまで自宅の室内を多く描いてきたが、マンションの供用部分の壁もずっと気になっていて、ようやく着手できた。階段の踊り場にある窓は東向きで、朝陽が差し込む時、陽が昇った時、向かいの建物に夕陽が反射する時、夜に照明が点灯された時…といろんな姿を現す。何色の壁なのかと問われれば白と答えるが、それを描こうとするには白色の絵具だけでは済まない。グレーのような、ベージュのような、混濁した色合いを出すために、複数の色を混ぜたり塗り重ねたりして、その様相に歩み寄っていく。
・テレビ画面について
テレビを消している時、それは曖昧な像を持った黒い板となる。室内風景が映っているが鏡ほど明瞭ではなく、物と物の境界線は柔らかい。地と図が一体となって、光の塊であるかのように感じる。
2023年10月 野中 梓
「Still life − 静物は沈黙を容認しない」
2023年1月30日(月)〜2月11日(土) Oギャラリーeyes
絵画の中に現れるイメージはどこからやってくるのか。学生時代のわたしにとってそれは、ひそやか且つ重大な問題だった。学部生の頃に自画像を描く課題がよく出た。わたしは自分の姿を、物を見て描くように描きたいと考えた。視覚の外、自分の外にある像を、油絵具に頼りながら取得していく。そうした過程は、描く対象が変わった今でも続いている姿勢だと思う。
2023年1月 野中 梓